こんな啓発活動も-畿央大学で看護学生に-

保健師選択科目 公衆衛生看護学概論
住民組織活動への支援や連携を考える―奈良県断酒会連合会長夫妻による講義―

 公衆衛生看護学概論は、保健師資格取得のための必須科目ですが、看護師希望の学生も履修しています。

 地域での看護活動の実践には、地域住民の予防や健康増進に対する意識を高め、支援を必要としている個人やその家族を住民同士で支えあえるようにグループづくりをすることやその活動が良い方向に発展していくように支援していくことが必要になります。

 そのような目的をもって組織化された住民のグループ活動を住民組織活動と言います。

 本学では、支援を必要とする個人やその家族と住民組織活動の関連を理解するために、奈良県断酒会連合会長夫妻を講師にした授業を行っています。

 この講義は、3年前の保健所実習で参加した保健事業でご一緒させていただいたことをきっかけに講師をお願いして、今年で3年連続となります。

 まず、奥様から、一家の大黒柱が過度の飲酒により色々な問題を起こすようになったことや止めると言いながらまた飲酒を繰り返す姿を見て、家族でありながら見放してしまう境地に陥るようになる家族の苦悩を切々と語られました。最後に入院した病棟の看護師長から断酒会に夫婦で参加するよう勧められ、半信半疑で参加したところ、自分たちと同じ問題を抱えた人やその家族と出会い、ようやく自分たちのことを理解してくれる人々と出会えた喜び、そして一番つらかったのは、断酒できない本人だったと気づかされたことなど話してくださいました。

 会長からは、断酒会の例会に参加し「今日1日飲まない」ことを繰り返し、20年断酒を継続できているのは、理解してくれる人や家族の支えであることを話してくださいました。

 またアルコール依存に対する偏見の歴史と対策、保健所や市町村での啓発活動について、分かりやすいスライドを用いての講義に加え、これから看護の道を進む学生たちに、アルコール依存に対する正しい理解を基盤に、病院や地域で支援者として活躍してほしいと熱いエールをいただきました。

 学生は、講義の間とても重い話でしたが真剣に聴き入っていました。また講義終了後には夫妻に駆け寄って話を聞く学生もいました。

 講義後の受講票には、「アルコール依存症については知っていたが、家族やご本人の苦痛や本当の気持ちを知ることができた」、「家族や本人の思いや苦痛を理解し、心身のケアをすることが必要であることを学ぶことができた」 「前回の授業で聞いた“セルフヘルプグループ”の実際の活動や役割、その重要性が理解できた」など、たくさんの感想が綴られていました。

 こういった当事者の方々のお話を直接聞くことは、より現実として学生にインパクトを与え、看護者としての役割の自覚を促し、学生自身の今後の飲酒行動などの保健行動の方向性につながるものと考えています。

text.松本泉美

2017年02月16日